ワキにはエクリン汗腺が多く、緊張やストレス、気候や運動により汗をかきやすい部位です。
エクリン汗腺から分泌される汗は無臭ですが、時間がたつとそこに細菌が繁殖、発酵して汗くさいにおいがしてきます。これはアポクリン腺が関係するワキガ(腋臭症)のにおいとは異なり、ご自身は気になるけど周囲の人はほぼ気づきません。多汗症に悩む人は思春期から中年世代の社会的活動が盛んな世代に多く、男女比ではやや男性の方が多いようです。
明らかな原因が存在しない「原発性多汗症」と何らかの病気や内服しているお薬が原因で生じる「続発性多汗症」に分類されます。明らかな原因のない原発性多汗症についてですが日本人の場合、5.8%の方が罹患していると言われています。日常生活に支障をきたす程度の重度の方は全国に220万人以上はいると推定されています。ミラドライなど多汗症の治療をするのはワキの原発性多汗症の場合に限ります。続発性多汗症の場合は原因となる疾患を治療する必要があります。
・ワキに汗ジミができて人目が気になる
・自分のワキ汗のにおいが周囲の人を不快にしているのではないかと心配
・ワキ汗のにおいが気になり制汗剤を手放せない
・ワキ汗でシャツを着替えることが多くて手間がかかる
・緊張するとワキ汗がで始める。意識するともっとでる
・ワキ汗パッドやタオルが手放せない
・ワキ汗が目立つようなグレーなどの色がきれない
・白シャツや下着のワキの部分が黄ばんでしまう
・ワキガの手術でにおいはとれたが汗の量の多さは相変わらず気になる
わきがとは正式名称を腋臭症といいます。アポクリン腺から分泌される汗が原因となり特有のにおいがでます。アポクリン汗腺からの汗はタンパク質が多く含まれており、またアポクリン腺は毛穴とつながっていることもあって毛穴の皮脂と混ざり合うことで、特有のにおいが発生してしまいます。もともと動物のアポクリン汗腺からはフェロモンが分泌されていました。ただ人が動物から進化していくにつれアポクリン腺は次第に退化し、ヒトの汗腺はほとんどがエクリン汗腺だけになってきました。ただ、ヒトのワキと乳頭、外陰部、耳にはいまだにアポクリン腺が残っています。ワキガの人の耳垢は湿っているのが一般的で、これはアポクリン腺が耳にも存在しているからと言われています。
欧米では9割の方がワキガと言われており、日本人は1割程度しかいません。つまり欧米では9割の人がワキガなため、ワキガは病気として認識されていません。多くの人がワキガとはいえ、においはさすがに気になりますので、欧米では香水の文化が発展していきました。欧米では強い香水が主流になったわけです。そのため日本人にとっては欧米の方の香水は香りが強すぎると感じるようです。一方日本人のワキガの罹患率は1割程度しかいません。欧米と比較すると非常に少ないですが、少ない事もあって日本ではワキガの方はワキガを病気として認識されやすく、また欧米のように強い香水をつけるわけにもいかず、精神的につらい思いをするのかもしれません。
局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま、6ヶ月以上認められ、以下の6症状のうち、2項目以上あてはまる場合を多汗症と診断する。
1.最初に症状がでるのが、25歳以下であること
2.対称性に発汗がみられること
3.睡眠中は発汗が止まっていること
4.1週間に1回以上、多汗のエピソードがあること
5.家族歴がみられること
6.それらによって日常生活に支障をきたすこと
<重症度判定>
HDSS(Hyperhidrosis disease severity scale)
自覚症状により、以上のいずれに該当するかを判断してもらい、③および④を重症の指標とします。
➀発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない。
②発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある。
③発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある。
④発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある。
①塗り薬
2021年にワキの多汗症治療薬の外用薬が保険適応となりました。この外用薬はエクリン汗腺に作用し交感神経が興奮することによる発汗を抑制することでワキの多汗症を改善させることができます。当院でも処方できます。
②ワキ汗注射
多汗症はエクリン汗腺の機能が過剰になっていることによって生じます。緊張したりストレスを感じたりしたときに放出されるアセチルコリンという物質が作動しエクリン汗腺から汗がでてきてしまいます。ワキ汗注射を皮内に注射することでアセチルコリンの伝達を阻害し発汗を抑えます。効果の持続期間は6ヶ月です。
③腋臭症手術
手術により腋臭症の原因であるアポクリン汗腺を除去します。ワキガのにおいには最も有効ですが汗の量については不向きなところがあります。効果は永続的ですが、術後の安静をしばらく要するのと、術後しばらくは安静なので日常生活に支障をきたすところが難点です。当院では腋臭症手術は行っておりません。
④ミラドライ(厚生労働省が認可した治療で当院おススメ)
脇の多汗症に効果がある治療です。メスで切開する事なくワキガ・多汗症の治療をすることができます。電子レンジと同じマイクロ波という電磁波を皮膚に照射することで汗腺に含まれる水に反応して強い熱を発生させます。その発生した熱により脇汗の原因となる汗腺を破壊して、発汗を抑えることができます。効果は永続的でにおい、汗の量ともに効果を発揮します。日常生活への支障もほぼありません。
塗り薬のダウンタイムはありませんが、効果が弱い上にずっと続けないといけません。ワキ汗注射もダウンタイムはまずありませんが6ヶ月おきに注射しないといけませんので、その分の手間やコストがかかります。腋臭症手術は効果が高く持続性もありますが、術後のダウンタイムが大きく、腫れがひどく、片方ずつしかできない施設もあるようです。また傷が残ってしまうというデメリットもあります。そこで当院としては、ミラドライをおススメしています。ミラドライは外用薬やワキ汗注射より効果がある上にダウンタイムも手術ほど大きくないというメリットがあります。